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僕はマゼランと旅した

著者スチュアート・ダイベック
タイトル 僕はマゼランと旅した
出版社白水社 出版年2006年 価格2400円
評価★★★★★
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 アメリカと聞いて、皆さんはどのようなことをイメージされたでしょうか。強さ、華やかさ、自由な精神と言ったところを思い浮かべた方もおられるかもしれません。あるいはその裏返しとして、傲慢、浪費、独善的といったキーワードを思い浮かべた方もおられるかもしれません。

 しかし昨今、サブプライム問題を扱う際にしばしば流される映像に見られるような現実があることもまた事実です。アメリカという国の中には、黒人やヒスパニック、その他の移民達を中心とした貧困層が形成する社会が存在しています。本書はそんなもう一つのアメリカを丁寧に描いた作品です。

 舞台はシカゴのダウンタウン。そこで暮らす「僕」の目を通して描かれるもう一つのアメリカ。それはセレブとは無縁の世界です。浮浪者が街を徘徊し、マフィア同士の殺人事件も日常的に発生する。そんな世界です。このシカゴの風景をダイベックは実に叙情豊かに描いています。

 この物語を読んで、なにか勉強になった、ためになったと感じることは少ないかもしれません。しかし、そんなことは些細なことです。ダイベックが描くシカゴの街並み、そこで暮らす人々の様子を味わうだけでも読む価値はあります。

 美しい小説。陳腐ですが、本当に美しい小説です。


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とみくら まさや (vzx01036@nifty.com) $ Date : 2008.06.08 $