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著者 | 山口雅也 | ||||
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タイトル | 日本殺人事件 |
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出版社 | 東京創元社 | 出版年 | 2007年 | 価格 | 720円 |
評価 | ★★ |
少し変わった設定の探偵小説です。
日本にあこがれを持つアメリカ人が、日本で探偵活動を始める。第三者的な視点から日本の文化や風習を見つめることによって犯人のトリックを暴いていく。そんな彼の活躍を、おそらくは日本に来たことがないであろうアメリカ人作家が描いた小説を「山口雅也」が発見して翻訳したものというのが本書の設定です。
従って、本書に描かれる日本は、どこか頓珍漢なことになっています。いかにもアメリカ人が思い描いていそうなステレオタイプな日本人、街並みが随所に登場し、「そんな馬鹿な!」とか「ありえねぇ〜」とニヤニヤしてしまいます。
この「他者からみた自分」は、基本的な部分での誤解が大きければ大きいほど面白いわけで、本書で書かれている「誤解された日本」は、結構とんでもない(いい意味で)ことになっています。たとえば、チョンマゲとかニンジャ、ハラキリといったお約束はもちろんのこと、ターボエンジン付きの人力車とか、展望台になっている観音菩薩像など、細かなくすぐりも豊富です。
本題の推理についても、他者から見た日本文化がうまく取り入れています。いかにも日本的な感情、行為の中に異国の人だからこそ見いだす違和感や、あるいは外国人として忠実に日本文化を学んだからこその微妙な差異を元にして、犯人が仕掛けたトリックを暴いていく形式になっています。この謎解きの部分は、ハッとさせられることが多く、素直に面白いです。
惜しむらくは、犯行の動機について、やや弱いような面が見受けられることです。もっとも、本書は推理小説であって、心理小説ではないのだから、ないものねだりなのですけれど。
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