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パイド・パイパー

著者ネビル・シュート
タイトル パイド・パイパー 自由への越境
出版社東京創元社 出版年2002年 価格700円
評価★★★
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 「ブレーメンの笛吹」をモチーフにして、老人が道すがらひょんなことから出会う子供達を引き連れて旅をする。こう書くと、なんだか牧歌的な感じですが、旅の行程が第二次世界大戦、ドイツによって占領されたフランス領となると、危険なことこの上ありません。しかも、イギリスまで連れて行くことになった子供達ときたら、今ひとつ事態の深刻さを理解していないわけで、案の定、方々で危なっかしい行動にでます。はたして老人は占領下のフランスを無事に脱し、安全なイギリスまでたどり着くことができるのでしょうか、というのが本書の粗筋です。

 分類上は「冒険小説」となっていますが、上記の通り、主人公は老人。颯爽たるアクションは皆無です。では、長年の経験を生かした機転によってピンチを切り抜けていくのかというと、必ずしもそう言うわけではありません。むしろ、比較的しょっちゅう途方に暮れている感じです。一行のピンチを救うのは、主人公の責任感に他なりません。いかにもイギリスの理想的な紳士としての責任感によって、絶望的な状況になっても決して諦めず、頑固なまでの誠実さだけを武器に襲い来る危機に立ち向かっていきます。

 ハリウッド映画にはなり得ないのでしょうが、イギリス映画ならこれぞ古きよき時代のイギリス紳士として堂々たる映画に仕立ててくれるのではないか。そんなことを考えながら、ページを繰りました。


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とみくら まさや (vzx01036@nifty.com) $ Date : 2009.01.03 $