4月の生き方


日記の目次

04.07 : 大ボケ
04.09 : おやしらず
04.10 : 桜の木の下で
04.13 : 早起き競争
04.14 : ジッポ
04.20 : 反省しきりの午前3時
04.23 : 抗議します。
05.29 : ゴールデンウィーク突入


大ボケ

2000.04.07

 僕は、基本的に音楽がないと生きていけない人間です。

 と言っても、聞いているのは、海外のポップスとか、フリージャズ、ヒップホップなので、あまり大したものを聞いているわけではないのですが、それでも仕事から帰ったら音楽を流しながら本を読んだりしているわけで、今度のボーナスが入ったらミニコンポでも買おうかなと早くも捕らぬ狸の皮算用な日々を送っております。

 ところが。

ウォークマンが壊れてしまったっす。

 しばらく前から、右側のチャンネルが調子おかしいなと思っていたのですが、昨夜、とうとううんともすんとも言わなくなってしまいました。弱った。

 音楽がないという生活は考えられないので、とにもかくにも新しいウォークマンを購入しようと、銀行から1万円を引き出しました。

 ここまではいいんです。

 問題は、銀行の帰り道に本屋に立ち寄ったことでした。

前から欲しかったブローデルの『歴史入門』が!

 ふっと意識を失った僕は、気がつくと他に3冊の本を抱えてレジに並んでいました。しめて1万500円也。

 なにをやってんだか。


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おやしらず

2000.04.09

 知人が、げっそりした顔をしてやって来ました。どうしたのかと聞くと、おやしらずを抜いたと言います。

 知人は恨めしそうな声で、歯医者への文句をぶつぶつとこぼし始めました。なんでも、

「痛かったら、手をあげてね」

と言われて、

「痛いっす」

と手をあげたにもかかわらず、医者は知人の手を押さえてそのまま、がりがりとやったのだそうです。

 知人には申し訳ないですが、正直、

「ナイス、ドクター!」

と心の中で拍手を送りました。いつも僕を邪険に扱っている報いだ。ケケケ。

 ともあれ心優しい僕は、おやしらずというものは、進化が遅れている人にだけあるもので、現代人になればおやしらずにかからないのだ。それが証拠に僕はおやしらずなんかになっていない、とここぞとばかりに胸を張って言いました。

 知人は、悔しそうに右頬を押さえながら「絶対、あんたにも、おやしらずの苦しみを味わわせてやる」と言いましたが、こういうのは負け犬の遠吠えというものです。久々の勝利。

 ところが知人を送り出してから、どういうわけか左の奥の方が、しくしくと痛みます。うつされた?

 とりあえずこの痛みが気のせいであることを祈りつつ、おそるおそる生きている今日この頃。人を呪わば穴二つと言ったところでしょうか。


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桜の木の下で

2000.04.10

 王子は、江戸時代から桜の名所として知られています。

 僕が今住んでいる所の近くに、桜田通りという通りがあって、その名の通り、春になるとちょっとした桜並木となります。この時期、少し遠回りになるのですが、毎朝、桜を眺めながら通勤しています(そのおかげで、遅刻する回数が増えるわけですけれども)。

 ところで、僕は子供の頃、どういうわけかあまり桜が好きではありませんでした。それは、坂口安吾だったか野田秀樹だったか忘れましたが、

「桜の木の下には死人が埋まっている」

ということに影響されたのかもしれません。あるいは、単に、ひねくれ者だったので、周囲が「いい」というものに対する警戒感だったのかもしれません。

 大人になった今、そうした子供の頃の純真さはどこかに消え失せ、

桜 → お花見 → お祭り騒ぎ

という三段論法しか思いつかなくなってしまいました。さらに今となっては、女の子をデートに誘う口実にしていたりします。こりゃ、いかん。


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早起き競争

2000.04.13

 僕が今住んでいるアパートの大家のおばあちゃんは、今時珍しいぐらい気さくで親切な方です。

 平日は夜遅く帰宅し、休日は休日で昼まで寝ていたかと思うと、そのまま外出して帰宅は深夜だったりするので、顔を会わせることは少ないのですが、それでも時々出会うと、「夕食、食べに来られます?」とか「洗濯しましょうか」などと、話しかけてこられてきます。また、出張だいうと、「車内でどうぞ」と巻きずしを差し入れていただけるわけで、一人暮らしの男性としては大変助かっています。

 先日、仕事で5日間ほど留守にしたのですが、その間、おばあちゃんは、郵便受けがあふれないように、新聞やら郵便物やらをとっておいてくださいました。

 問題は、新聞を回収する作業を、いまだにおばあちゃんが続けていることです。

 朝、出勤する前に郵便受けを開けると、新聞が入っていません。新聞屋さんが、配達し忘れたのかなと思っていると、翌日、おばあちゃんがにこにこしながら、「新聞とっておきましたよ」と差し出されます。「どうも、どうも」と受け取ると、おばあちゃんは、嬉しそうに「たくさん新聞とられているんですね。どの新聞が面白いですか」とたずねてこられます。産経新聞にはスヌーピーが掲載されてますよとか、朝日新聞には山田さんちの漫画が載ってますなどというやりとりを、ここ一週間ほど繰り返していたりします。手紙が入っていたりなんかすると、「恋人?」などと、やはり嬉しそうに聞いてこられます。ちゃいます、ちゃいます。

 ともあれ。

これ以上、甘えちゃいかん。

 おばあちゃんの負担を減らそうと、今日から一念発起して、彼女より早く起きて、新聞を取っておこうと決意しました。

 が、しかし。

早いっす。

 おばあちゃんは、一体何時に起きているのでしょうか。昨日7時に郵便受けを見た時には、すでに郵便受けは空っぽでした。今朝6時45分でも、やはり同様です。明日は6時30分に挑戦してみようと思います。それでもなければ……、僕はそれ以上早く起きられません。


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ジッポ

2000.04.15

 とうとう29歳になってしまいました。

 冨倉家の家訓には

自分の誕生日は働かない

というのがありまして、生まれた日は仕事を忘れて、のんびりすることになっています。もっとも、僕の場合は、普段から仕事してないという説もありますけれど、それはさておくとして。

 知人が、

「誕生日プレゼントだ。ありがたく受け取れ」

と、鞄の中からなにやら青い箱を取り出しました。

 開けていいかとたずねると、いいよと言われたので、ごそごそと包みを開けると(基本的に、こらえ性ないっす)、中からジッポが出てきました。

めっちゃうれしい

 タバコの本数は減らせよという知人の忠告もそこそこに、さっそくタバコを吸ってもいいかとお伺いを立てると、構わんとのお言葉を頂いたので、火をつけようとしたところ、期待していた火ではなく水が飛び出しました。

 知人は、悪魔のような笑みを浮かべて、「ばかでー」とのたまいました。

29になって、こんなベタな手にひっかかるとは!

 知人はにやにやしながら、僕の手からジッポ型水鉄砲を奪い取り、あらためて本物のジッポをくれましたが、傷ついた僕の心は、そう簡単にはいやされません。

絶対仕返ししてやるけんね。

 あと、できれば水鉄砲の方もほしいっす。


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反省しきりの午前3時

2000.04.20

 今月はマジでやばいです。

 「毎月2万円貯金する」という知人との約束は、風前の灯火どころか、とっくの昔に消え去り、さらにバケツで水をぶっかけるという念の入った消火活動までしてしまっています。会わせる顔ないぞ。どうしよ。

 それはともかく。

 仕事で明治大学に行って来ました。すごいですね、今時の大学の設備は。教室には、各机に行き渡るように情報端末が用意され、エレベータはあるは、エスカレーターはあるは、もちろん、冷暖房完備。ホント、すごいです。

 さて、明治大学からの帰り、上司が

「神保町に行こう」

と言いました。なんて、物わかりのいい上司でしょう。もちろん、僕としては異議のあろうはずありません。行きましょう、行きましょうといった具合で、喜んでついていきました。仕事? そんなの知ったこっちゃない。

 神保町に着くと、上司は、

「自分はゴルフ用品を見たいから、ここからは別行動にしよう」

と言いました。

素敵すぎる!

 本当に僕は理解のある上司に恵まれています。

 こうなると鎖から解き放たれた子犬状態です。あっという間に古書街へと消え去り、理性も意識も吹き飛んだ状態のまま、古本屋をはしごしたあと、我に返ったときには、手には5冊の本が。それでもって、財布からは5千円札が消えていました。この間、30分足らず。なんたることか。

 はたして僕が「貯蓄」というひとなみの行為を満足にできる日は来るのでしょうか。

と言いながら、今週末は「国際ブックフェア」が控えていたりします。出費が……

追記
 この一件を知人に話したところ、「どうせ、約束が守られるとは思ってなかった」との回答が来ました。最初から期待されてなかったのね。トホホ。

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抗議します。

2000.04.23

 知人が、「ピカソ展のチケットが手に入ったから、ついてこい」と言いました。もちろん、僕としてはイヌのように尻尾を振ってついていくわけです。

 ピカソというと、僕の父親などは、「あんなん、子供でも描ける」と言いますが、描けないですよ。少なくとも普通の子供には無理です。それにしても、日本の美術館は、どうしてこうも狭いのだろう。少なくとも身障者やお年寄りのことを考えて、1フロアーで一分野を観覧できるように広くスペースをとるべきだなどということを話しながら、ピカソ展を楽しんでいました。実際、29歳と30云歳の2人にとって、階段の上り下りは重労働です。などと言うと、知人は、

「あたしゃ、まだまだ若い。誰かさんと一緒にするな」

と言いましたが、しかし、後半の彼女のペースは明らかに落ちていたことを僕は見逃しません。お互いもう若くないっすよ。

 さて、一通り見終わって、出口に到着したところ、知人がトイレに行きたいと言いました。なんだかんだ言いながら、時間は3時間ほど過ぎています。トイレぐらい行きたくなるでしょう。別に僕は鬼でも悪魔でもないので、こころよく知人がトイレをすませるまで待っていることにしました。

 ところが。

 知人は、

「この辺でうろちょろしておいて」

と言い残して、さっそうとトイレに行きました。

うろちょろっすか!

 確かに、僕は昔から落ち着きのない性格で、じっとしていられないことは事実です。でも、それを差し引いても、29の男性にむかって「うろちょろしとれ」というのは、あんまりじゃないでしょうか。まるっきり子供扱いじゃないっすか、と僕にしては珍しく激しく抗議しました。

 ところが、トイレから戻ってきた知人は平然とした顔で、

「そういうことは、待ち合わせ場所にちょっと早く着いたのをいいことに、大道芸を見に行って、遅刻しないようになってから言いましょうね」

 しまった、ばれてた。


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ゴールデンウィーク突入

2000.04.29

「ハイキングよ」

と突然、知人がいいました。

 ハイキングですか。ハイキング、ハイキング。北欧の海洋民族はバイキング。今一つひねりがないなと思いながら、

「ハイキングというと……」

と僕が口を開こうとしたところ、知人はぴしゃりと

「北欧の海洋民族とか言い出したら、殴るからね」
「そんなくだらないこと、言わないですって」
「言ってるやん。いつも、いつも、くだらないことばっかり」

 これ以上、この問題にかかわると、北欧の海洋民族の話をしなくても蹴りが入りそうだったので、話を元に戻すことにしました。

「ハイキング。いいですよ。嫌いじゃないですから。でも、もう夕方の4時です。今からハイキングというのは、いかがなものかと」
「だから、いいんじゃない。もう4時でしょ。ハイキングに行くような健全な方々は、そろそろお帰りになるわけよ。そうすると、人の少ないところで、ゆっくりできるじゃない」

 すでに知人は、やる気十分です。こういう時に逆らうと恐いので、僕はおとなしく言うことを聞くことにしました。実際、夜のハイキングというのも、おつなものです。

 早速、知人は夕食用に炊いていたご飯でおにぎりを作り始めました。「中身は何がいい」と聞かれたので、塩鮭なんかいいっすね、と言うと、

「残念、鰹節しかないから、おかかでいいよね」

と答えました。だったら聞くなよ。

 ともあれ、我々は、夕方からのハイキングに出かけました。現地に着いた頃には、すでに日は落ち、あたりは知人が予想したとおり、人影もまばらになっていました。

 が、しかし。

「ゴミね」
「ゴミっすね」

 辺りは、ハイキング客が残したと思われるゴミで一杯でした。これでは、ムードもなにもあったものじゃありません。

「ゴミは持ち帰らんとねぇ……」

 力無くつぶやいた知人に深く頷いた学生時代のゴールデンウィーク。あれから早くも5年経つわけですが、今年は東京に出てきてから初めて東京でゴールデンウィークを過ごそうと思っています。しかし、なーんにも計画が立っていません。なんとかしないと。


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とみくら まさや(vzx01036@nifty.ne.jp) $ Date: 2000/04/07 $