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03.05 : おばあさん強し
03.09 : それ僕が聞きたいです
03.17 : 春になると……
僕が今住んでいるアパートは、アパートと言っても一軒家を少し改造しただけのもので、事実上貸し出しているのは2部屋、住人は大家のおばあさん、お二階のOLさん、それに僕です。
この大家のおばあさんは、90を超えているとは思えないほどチャーミングな方です。耳が少し遠いようで、時々トンチンカンなやりとりになるものの、時にはメロン丸ごと1個の差し入れがあったりと、何かと世話を焼いてくださいますし、手押し車を杖代わりにして、近くの教会に出かけるなど、本当に90を超えているとは思えないほどアクティブな面もあります。
ある休日のお昼近く。
なにやら外の方から聞こえてくる大声で目を覚ました僕が、聞くとはなしに聞いていると、どうやら新聞の勧誘員がおばあさんに新聞を売り込もうとしているようでした。
余談になりますけれど、新聞の勧誘員って、どうしてああも不躾な人が多いのでしょうね。一部の心ない人と思いたいところですけれど、たいていの場合不愉快な気分になることが多いです。新聞社の人は、記事を作っておしまいではなくて、読者の手元に届くまでのフローも、もうちょっと考えてもいいのではないでしょうか。この種の事件って、絶対に新聞の記事には載らないのでしょうけれど、イヤな思いをした経験がある人って、案外多そうです。もっとも、この問題、あまり深く突っ込むと恐いことになるのだそうですけれど。
ともあれ。
普段気丈なように見えても、おばあさんです。何か怪しい雰囲気になったら飛び出そうと、はらはらしながら、やりとりを聞いていると、こんなことになりました。
「●●新聞ですけど」
「えぇえぇ、うちは読売ですよ」
「読売やめて●●新聞取りませんか」
「この間ね、夕刊が入ってたの」
「うちは夕刊はないですね。ですから、お安いですよ」
「夕刊は取ってないのよ。だから間違えられたんでしょうね」
「なるほど。うちは夕刊ないですから、間違えませんよ」
「だからね、その分、お支払いしなくっちゃって待ってたんですよ。ちょっと待ってくださいね。お金取ってきますから」
「いや、うちは読売じゃないです」
「はいはい。ちょっと待ってくださいね。お支払いしますから」
「いや、だからうちは夕刊入れてないです」
「あら変ねぇ。夕刊入っていたんだけど」
「それは読売さんでしょ。うちは●●ですから」
「えぇ、読売ですよ」
「うちは読売じゃないんです」
「あら、読売じゃないの」
「えぇ。ですから読売やめて●●にしませんか」
「夕刊はいらないの」
「えっと、ですからうちは夕刊はなくて……」
「だからね、この間の夕刊代お支払いしなくっちゃ。おいくらでした?」
「あの、うち、違うんです」
「えぇえぇ、間違われたんですよね」
「いや、その……」
「ちょっと待ってて下さいね。お金取ってきますから」
「あの……また来ます」
この勝負、おばあさんの勝ち!
「兄ちゃん、パチンコやるか」
夜遅く、東十条の定食屋さんでのことです。たまたまカウンターの隣に座ったおじさんと妙に意気投合して話し込んでしまいました。
とは言うものの、基本的にじっと座っていることができない性分。パチンコはどうも僕の性に合わないようです。さらに言えば、くじ運のない人間。先日も某校の卒業パーティでビンゴ大会が開かれて、珍しく早々にビンゴになって喜んでいたら、当たったのは
X Live のスターターキット!
僕にどうしろと?
話を元へ。
おじさんは、なんでもパチンコがすごく上手なのだそうで、一時期はパチンコで生活費を稼いでいたほどの腕前を持っているのだそうです。それ、すごいです。
おじさんによると、パチンコの必勝法はズバリ店選びなのだそうです。ではどのような店がいいかというと、
最後の3番が難しいですな。
ともあれ。
その後もおじさんといろいろな遊びの話になったのですが、いかんせん、
ほとんど僕の知らない世界!
するとおじさんが、
「いやー、君は真面目だね。結構貯めてるだろう」
とおっしゃいました。
が、しかし! 全然、これっぽちも貯まっていません!(31歳、胸を張って言うようなことじゃないですけど)
「それじゃあ、一体何に使っているの?」
それ、一番の謎です。
財布に穴があいているんじゃないかと最近思うようになっている冨倉
喫茶店でボケーッとしていると、ウィンドウの外で推定年齢35歳くらいの男性が、なにやら大声を張り上げているようでした。
ウィンドウに遮られて、演説しているとも歌っているとも聞こえてくる男性の大声は、店内にちょっとした話題を振りまいていました。いわゆる、お近づきにはなりたくないけれど、遠目に見ている分にはというやつです。
男性は緑のジャンパーに、これまたなぜか緑のズボンと全身緑ずくめでした。そういえば、その昔、ロビン・フッドのパロディ映画に『ロビン・フッド緑のタイツ』というものがあったなと、らちもないことを考えながら、僕は聞くともなしに男性の大声聞いていました。ホント、春ですね。
僕が店にはいる前から件の男性は店前におられたので、かれこれ1時間以上はパフォーマンスをされていることになります。
疲れ知らず!
あるいは
テンション下がらね〜
ホント、春になりました。
なんてことを思いながらも、さすがにこちらとしても飽きてくるわけです。そろそろ店を出ようかなと思ったまさにその時です。
全身緑の件の男性が店に入ってきました。
それまで遠目でいてくれた人が、いまや目の前にいるわけです。次のアクションがどのようなものか、僕としては出るわけにはいきません。そんな僕の(勝手な)期待に応えてくれるべく、緑の男性は、
「お茶」
とおっしゃいました。コーヒー専門店でお茶ですぜ、旦那。どうしやすか。美人のウェイトレスさんとしても、困惑した表情を浮かべつつ、お客様、申し訳ありませんが、当店ではお茶は出しておりませんので……と言うしかありません。
すると緑の男性は、
「あ、ないの。それじゃあ、何があるの」
とおっしゃいました。ウェイトレスさんが、メニューを見せながら、親切に説明をしていたところ、
「あー、コーヒーって嫌いなんだよね。苦いし」
うわ〜、ありえね〜という店内の声にならない突っ込みを全く気にすることなく、緑の男性は、足早に店を出て行かれました。
いや、ホント、春ですね。