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8月の生き方


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08.08 : 食事だけの関係
08.10 : ぷれぜんと・ふぉー・みー


食事だけの関係

2004.08.07

 東京は依然として暑い日々が続いていますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。引き続き、我が家のエアコン様は機嫌が悪いようです。

 そんなこともあって、1階とは言うものの、独身男性の一人暮らし、見られて困ることはないですし、盗られるようなものもないため、夜帰宅すると、窓を全開にして、愛度で生活をしています。

 そんなある日曜日の夜。

 大家さんの花壇がある庭から、みゃぁみゃぁと声が聞こえてきました。一時期ほどではないにせよ、僕の住んでいるところは野良猫が多く、夜ともなると空き地や駐車場で集会を開いている猫たちをたびたび見かけます。しかも季節は夏。それはまぁ、猫たちにとってもいろいろと楽しいことがあるのだろうと、わびしい一人暮らしを続けている僕としては、ちょっぴりうらやましい気分になりつつ、ダラダラと本を読んでいました。

 ところが、どうも様子が変です。いつまでも鳴きやまないのに加えて、声に切迫した雰囲気がまじっています。どうしたのだろうと、網戸を開けたところ、さっと室内に飛び込んできました。

 実家にいた頃、我が家では動物がいない時期がないほど、なんらかの動物がいたのですが、猫だけは飼ったことがありません。そのため、この猫がどういう種類のものか、何歳くらいなのか確かではないのですが、グレーの毛並みに薄い縞模様、大きさは僕の両ひざに乗ってごろんと横になると、頭がひざから落ちるくらい。このくらいの大きさで首輪をしていないところを見ると、多分、野良猫です。

 やはり飢えと疲れがあったのか、近所のコンビニで慌てて買ってきたししゃもの唐揚げを水洗いしたものをぺろりとたいらげると、満足そうな顔をして、「ふにゃあ」と挨拶して、僕の膝にのぼり、コロンと横になりました。体をなでてやると、目を閉じて、ごろごろとのどを鳴らし、しばらくすると眠りにつきました。そのまま抱え上げても、なすがまま状態なのをいいことに、その夜は一緒に寝ました。

 翌朝。

 給料泥棒とはいえ、一応はサラリーパーソン。仕事に行かなければいけないわけです。以前、部屋にひとりぼっちになった猫がどのようなことをするか、痛い目にあっている僕としては、出社する時に猫を部屋の外に連れ出しました。猫は、後ろを振り返りもせずにさっと走り去ってしまいました。少しも寂しさを感じなかったと言えば嘘になります。しかしまぁ、そんなものだよ。そう思いながら仕事に出かけました。

 その夜。

 仕事を終えて帰宅し、いつものようにうだうだしていると、網戸をカリカリとひっかく音がしました。昨夜の猫でした。

 と言うわけで、今、僕の部屋には猫がいます。

 僕が出社する時に一緒に出かけ、僕が帰ってくると、どこからともなく現れる。そんな状態が、しばらく続いています。

食事だけの関係

 それもまたいいわけで。


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ぷれぜんと・ふぉー・みー

2004.08.10

 情が移るといけないので、依然として猫は猫のままです。まだ名前はありません。

 引き続き、僕が出社する時に家から追い出され、夜になって猫が気の向いた時に我が家にやってきて、網戸をカリカリして中に入るという生活スタイルです。

 猫は野良猫の割には人なつっこいようです。

 猫は、次第に大胆になってきたようで、開けっ放しになっている洗濯機の中から僕が気に入っていたTシャツ2枚を引っ張り出して、ずたずたにしてみたり、ゴミ箱によじ登ろうとしてひっくり返したりと、そこそこ悪さをしでかすのですが、僕が「それはしちゃいかん!」と叱ろうものなら、小首をかしげて、「何かあったの?」と、しらばっくれます。可愛いわけです。

 僕が立ち上がってどこかに行こうとすると、興味津々の顔になり、尻尾をピンと立てて、僕の後をついてきます。トイレに行くだけなんで、ついてこなくていいよと言うのですが、猫は足下にまとわりつきながら、トイレの前までついてきて、用を足して出てくると、マットの上でちょこんと座って僕が出てくるのを待ちかまえています。たまらず抱きかかえると、声を出さない「みゃー」をしてくるわけです。本当に可愛くて仕方ありません。

 晩ご飯を食べ終わると、とことこと僕の膝の上に乗り、ころんと横になります。ひとしきり体をなでてもらうと、ひょこっと立ち上がって、テーブルの上に登り、部屋の散らかり具合を確かめて、猫の満足いく状態だと「みゃー」と喜び、なにか猫にとって納得いかないことがあると、「片づけろ」と言わんばかりに、「フーッ」と威嚇します。威嚇されても、僕にとっては住み心地がいいわけで、無視していると、猫は頭突きをくらわしてきます。細身とはいえ、テーブルの上からジャンプして頭突きされると、結構ダメージ大きいです。仕方なく床に放り出されている本や CD を片づけると、猫は「やればできるじゃないか」とご褒美に僕のほおをなめてくれます。

 ご存じの通り、猫の舌は犬に比べてざらざらしていて、必ずしも気持ちいいとは言えないのですが、それでもやっぱり嬉しいものです。先ほど頭突きされたことも忘れて、猫の頭をなでてやると、ゴロゴロとのどを鳴らし、ほおをすり寄せてくるわけです。可愛くて仕方なくなるわけです。

 そんなある夜。

 いつものように遅めの夕食を取り、猫はいつものようにひとしきり遊んだ後、外に出たがりました。僕も読みたい本があったので、網戸を開けてやると、猫はタッと外に出て行ってしまいました。

 猫との生活が始まったとはいえ、僕も、そしておそらくは猫も、「飼っている」、「飼われている」という感覚は希薄です。お互い気が向いたら遊び、どちらかが飽きた時点で遊びはおしまいです(と言っても、猫の方が飽きる方が多いのですけれど)。僕が都合が悪くなると外に追い出すように、猫も自分の都合によって、外に出たり中に入ってきたりを繰り返しています。

 そんなわけで、猫が出て行った後、僕はと言えば、お風呂の用意をし、いつものように本を読んでいました。

 しばらくして、網戸をカリカリとする音が聞こえてきました。手を伸ばし、網戸を開けてやると、猫はトコトコと僕の側に寄ってきました。

 いつもなら、網戸をカリカリしながら、みゃーと鳴くのに、この夜に限って、うんともすんとも言わずに中に入ってきたことに僕はもう少し注意を払うべきでした。しかしながら、神ならぬ我が身。とりあえず猫が戻ってきたことで気をよくしていたため、特別に警戒することもなく、猫の頭をなでてやりました。すると、猫はぽとりと僕のひざになにかを落としました。ゴキブリでした。

おわっ!

 その夜以来、猫に顔をなめてもらう時に、ちょっとばかり複雑な気分になっています。

でも、可愛いんですけどね。


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とみくら まさや(vzx01036@nifty.ne.jp) $ Date: 2004/08/07 $