ある雪の日のことです。ご隠居様が雪見に向島に出かけたときのこと。
乞食が三人、酒盛りをしている。乞食とは言え、なかなか風流なことを言っているので、ご隠居様が面白がって、一句それぞれ詠んでもらいたいと願います。彼らの句。
「吹くからに秋のくさ夜は長けれど肱を枕に我は安秀」 糞屋の安秀
「ほのぼのと明かしかねたる雪の夜も、ちぢみちぢみて人丸く寝る」 垣根の元の人丸
「千早ぶる神や仏に見離され、かかる姿に我はなり平」 なり平
これを聞いてご隠居様が感心し、皆様方は雲の上の和歌三神だと誉めると、
「いえいえ、菰(こも)の上のばか三人でございます」