わ の段


和歌三神

 (わかさんじん)
 地口落、仕込落
 出典:落語特選 上 (ちくま文庫)

 ある雪の日のことです。ご隠居様が雪見に向島に出かけたときのこと。

 乞食が三人、酒盛りをしている。乞食とは言え、なかなか風流なことを言っているので、ご隠居様が面白がって、一句それぞれ詠んでもらいたいと願います。彼らの句。

  「吹くからに秋のくさ夜は長けれど肱を枕に我は安秀」 糞屋の安秀

  「ほのぼのと明かしかねたる雪の夜も、ちぢみちぢみて人丸く寝る」 垣根の元の人丸

  「千早ぶる神や仏に見離され、かかる姿に我はなり平」 なり平

 これを聞いてご隠居様が感心し、皆様方は雲の上の和歌三神だと誉めると、

「いえいえ、菰(こも)の上のばか三人でございます」


古典落語目次

とみくら まさや(vzx01036@nifty.ne.jp) $ Date: 2001/06/13 $