著者 | パスカル・キニャール | ||||
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タイトル | 舌の先まで出かかった名前 | ||||
出版社 | 青土社 | 出版年 | 1998年 | 価格 | 2200 |
評価 | ★★★ |
言葉に関する2つのエッセーと、その間に挟まれた1編の童話。それぞれが1つの作品として完結していながら、それでいてそれぞれを補っている実によくできた構成です。
本書は、「言葉を発する」こと、何らかの理由によって「発すべき言葉」が出てこない状況を非常にセンシティブに描写しています。
少々大上段に構えてしまいますが、我々は多くの言葉に囲まれています。しかし、あまりにも言葉が多すぎるがために、発すべき言葉を見失ってしまっているのかもしれません。キニャールの表現を借りれば、「フォークが突き刺さらないほど固まったジェラート」のように凍り付いた状況、発すべき言葉を探すメデューサの仮面をあまりにも何重にも被らされているかのようです。
この項、ピカートの『沈黙の世界』に続きます。