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著者 | J.M.クッツェー | ||||
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タイトル | 敵あるいはフォー | ||||
出版社 | 白水社 | 出版年 | 1992年 | 価格 | 1600 |
評価 | ★★★★★ |
本書は、ダニエル・デフォーの『ロビンソン・クルーソー』、『ロクサーナ』を下敷きにしたパロディ小説になっています。
本書の中には、人食い人種の足跡は出てきません。ジョン・オバート号での反乱も起こりません。淡々とした島での生活の後、救出された船の中でイギリスの地を踏むまでにクルーソは他界します。
しかし、物語はまさにそこから始まります。
島での生活をなかなか出版しようとしないフォー(デフォー)へと宛てたクルーソ夫人ことスーザン・バートンの愚痴と窮状を訴える手紙が本書の第1のテーマとなります。
スーザンの手紙は、ゴシップ作家としてのフォーの実像をあからさまにするという縦糸と、舌を切り取られ異国の土地で沈黙の世界の住人となっているフライデーにとっての自由とは何かを横糸に構成されています。
本書が、イギリスのジェントルマンという理想像を確立したデフォーの作品をモチーフにしていることから、そのアンチテーゼとして女性、黒人など被支配者の解放をテーマにしているという解読もできますが、しかしそのような難しいことを考えずとも、ハチャメチャでなくてもパロディはできるのだというお手本として充分楽しめます。久々のお勧めです。
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