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著者 | ウンベルト・エーコ | ||||
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タイトル | 前日島(上) | ||||
出版社 | 文藝春秋 | 出版年 | 2003年 | 価格 | 714 |
評価 | ★★★★★ |
相変わらず、緻密な、いい意味で読者を混乱させる物語になっています。
本書は、大航海時代、科学が充分に発達していない時代を背景に、子午線上に存在する島を巡る物語が展開されます。この子午線上にある島が「前日島」で、この子午線を地球の回転と逆に越えれば1日前に戻れるという設定になっています。
これだけなら、70年代のSFなのですが、エーコの手にかかると、この荒唐無稽なお話しが、複雑怪奇な迷宮の様相を呈します。なにしろ、前半に当たる上巻では、主人公はちっとも島に上陸しないんですね。島を目の前にした無人(と思われる)の船「ダフネ」に、漂着した主人公は、ほとんど何も具体的な行動を起こさずに、延々と自分が「ダフネ」にたどり着くことになった運命を思い返すことに終始しています。しかも、一直線に「ダフネ」にたどり着くわけではなく、ある時は「包囲戦」のことであったり、またある時は、見えない「兄」の存在であったりと、脱線を繰り返していきます。ところが、この脱線が、巧妙に複線になっているわけで、僕としては「してやられている」としか言いようがありません。
ともあれ、上巻を読み終わった今、さっさと下巻を手に入れねばと思っています。面白いです。
●関連
『前日島(下)』
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