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物語作家の技法

著者フェルナンド・サバテール
タイトル 物語作家の技法 よみがえる子供時代
出版社みすず書房 出版年1992年 価格2884
評価★★
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【感想】

 本書は、哲学を羅針盤にして、「物語」を分析していきます。対象になっているのは、『宝島』『海底二万哩』など、どちらかといえば男の子向けの児童文学書です。

 また、いかにもスペインの研究者らしく(というと、かなり偏見入ってしまっていますけれど)、現代文学に対して保守的な立場に立っておられます。

 ローランズの『哲学の冒険』が最近の SF 映画を題材にして哲学を解説しているのに対して、本書はあくまでも主眼は物語の分析になっています。そのため、題材に挙げられている小説を知っていて、なおかつ基本的な哲学の知識を持っている人が読者層になっているわけで、少しストライクゾーン狭い?

 ともあれ。

 サバテールの主張を乱暴に要約すると、「物語復興」ということになるのではないかと思います。

 確かに現在、「物語」は大衆小説に見いだされることはあっても、「文学」の中で「物語」を見つけるのは難しくなっています。もちろん、大衆小説は文学ではないとか、ましてや大衆小説はダメなんてことをしたり顔で言うつもりはありません。僕自身、大衆の一人にすぎないわけですし……。ただ、消費されるものとしてのみ「物語」が創り出されている現状には若干違和感を感じています。

 物語は本来「語られるもの」だと思います。「語られるもの」として、語り継がれる中で手直しされたり、付け加えられたり、あるいはまた別の物語が生み出される。そういうものなのではないかと思います。

 本書の内容とは直接関係ないのですが、そんなことをぼんやりと考えつつ。


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とみくら まさや (vzx01036@nifty.com) $ Date : 2005.05.31 $