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著者 | ニコルソン・ベイカー | ||||
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タイトル | ノリーのおわらない物語 |
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出版社 | 白水社 | 出版年 | 2004年 | 価格 | 2000 |
評価 | ★★★★★ |
内容を確かめず、ただ著者の名前だけで買ってしまうことって、皆さんもあるのではないでしょうか。僕の場合、チャペック、ヴォネガット、そして本書の著者ベイカーがそういう作家になります。
『もしもし』、『中二階』、『フェルマータ』、『室温』と、なんでもない日常のわずかな心の動きを、これでもかというくらい微細に描くベイカーが、今回の『ノリーのおわらない物語』では、9歳の女の子のおしゃべりを、事細かに再現しています。
他のベイカーの作品と同じく、本書でも大冒険とか大事件が起こるわけではありません。お友達と遊んだこと。怖い夢を見たこと。クラスでいじめられている女の子がいること。家族で古いお城に遊びに行ったこと。そして、今日思いついたお話しのことなどなど。そうした日常生活のなかで、普通に過ぎ去ってしまうようなことが、本当に事細かに書き連ねてあります。これが本当にうまいんですね。岸本佐知子さんの翻訳のうまさも手伝って、小さな女の子が、身を乗り出してお父さんにお話しをしている光景が自然と浮かんできます。僕の個人的なことを言えば、姪っ子(5歳)とお喋りしている時のような感覚になって、思わず微笑みが浮かんでしまいました。
ここからはコンテクストなお話し。
ブログの方でも書きましたけれど、本書の主人公になっているノリーは、ベイカーの娘さんがモデルなのだそうです。『室温』でお父さんの腕の中で眠りにつこうとしていた赤ちゃんが、こんな素敵なお話しをするお嬢さんに成長したんだと、なんだか自分のことのように楽しい気持ちになってしまいました。
ともあれ、ベイカー・ファンの方には同時代を生きている楽しみ方が出来るので、絶対にお勧めです。ベイカーをまだ知らない人でも、まだお父さん、お母さんになってないのなら、素直に楽しめるのではないかと思いますし、既に大きなお子さんをお持ちの方も、「この子にもこんな時期があったな」と懐かしく思えるのではないでしょうか。
とにもかくにも、ノリーのお話の仕方が微笑ましくて、本当にいい感じです。
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